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asics榧野俊一氏が語る「GEL-EXTREME」 それを受け継いだ「EX89」について (前編)

asics榧野俊一氏が語る「GEL-EXTREME」 それを受け継いだ「EX89」について (前編)

榧野俊一(かやの・としかず)
1993年に発売された、アシックスのランニングシューズ「GEL-KAYANO TRAINER」の初代デザイナー。
ランナーから“カヤノ”の愛称で親しまれており、モデル名の由来ともなった人物。

アシックス「ゲルカヤノ」シリーズを手掛けた榧野俊一の処女作をベースにした「EX89」についてKICKS LAB.がインタビューさせて頂きました。

---さっそく榧野さんの経歴についてお聞かせください。

この会社で36年働いています。
1987年に入社していますけども当時はまだ、国内販売と海外販売で分かれており、当時は海外向け、国内向けに企画のデザインや階層も分かれていて、僕は海外向けの商品を担当していました。
この時に最初に担当したのが、海外向けの商品、特にアメリカ向けの「GEL-EXTREME」で、デザインも開発も含めて全て一貫して任されました。
その後に「GEL-KAYANO」という商品がありますが、ランニングシューズを担当させてもらったという流れです。


---アシックスに勤めた経緯をお聞かせてください。

私の地元が鳥取県の境港なのですが、そこにオニツカの工場があったんです。
子供の頃、よく通学するときに通り道だったので工場を見ながら立派で綺麗な工場だなと思いながら通学していました。馴染み深かった思い出があります。

アシックスを選んだ理由というのは他にもあるんですけど、就職するときに色々なコースがあったんですよ。先生になりたいとも思っていましたし、後はゲームメーカーにも内定していたのですが、でもやっぱり長い目で見た時に先生という仕事やゲームメーカーっていうのも過酷な労働条件だし、その点スポーツは身体を健康にしてくれるし、どちらかと言えばデザイナーとして採用してくれるお話だったので、地元にもあったアシックスを選んだというのがそもそも理由ですね。

よく覚えているのですが、面接官がなぜスポーツメーカーを選んだのですか?
という質問をしたときに答えたのは、「やっぱりスポーツ用品は無くならないですよね。
だからスポーツメーカー選びました。」……このような話をしたのを覚えています。


---アシックスに入社して36年とお聞きしましたが、今まで担当した代表的なシューズはどのようなものかお聞かせください。

まずは新入社員の時に担当したこの「GEL-EXTREME」です。バスケットボールシューズですね。右も左も分からない状態で作らされました(笑)
もう一つは「GEL-KAYANO」というランニングシューズですね。
93年のAWに発売されたのですが、元々はこれもアメリカ向けなんですよ。当時は海外向けの企画商品でした。
それと「GEL-SAGA」というランニングシューズがあるのですが、この「GEL-SAGA」も私が担当しています。
ランニングシューズで言えば、「GT2000 New York」も実は私が最初に担当させてもらいまして、その他の「GEL-NIMBUS(ゲルニンバス)」もそうです。「GEL-KAYANO」と対になる商品です。それも担当してきました。


---やはり沢山ありますね!(笑)

いっぱいありますよね!
後、「GEL-FUJI」っていう商品もありますし、「NOOSA TRI(ヌーサトライ)」というトライアスロン用のシューズですね。そういったのも担当しました。。
後、代表作としてもう一つ、極めつけがあります!
イチローさんのスパイクも、、、!


---えっ、そうなのですね!それは知らなかったです!

あと「GEL-KINSEI」も担当させてもらったということで、もう沢山挙げるとキリがないのですが、代表的なシューズがどれかと聞かれたら「GEL-KAYANO」と、この「GEL-EXTREME」ですね。

---今のお話の中でも出てきた「GEL-EXTREME」についてお聞きかせください 「EX89」の元となった「GEL-EXTREME」を担当する事になった背景は?

当時は新入社員ですからね。(笑) 実は何もなくて、とにかくアメリカ向けの商品だよと。 アシックスのアメリカの販売会社がバスケットボールシューズを売りたいので、新入社員の私に期待をされて、カッコイイやつを作ってくれというようなところで任されたんですね。最初はただ作ってくれって要求だけだったんです、、、。後で気がつけば、asicsアメリカが契約しているアメリカのプロバスケットボールチームの選手が履くんだよって言われて。最初に言ってほしかったですよね。(笑)

---「GEL-EXTREME」についてデザインされたと聞きましたが、どの様な時に着想を得てデザインしたかお聞かせください。

新入社員研修中に途中で研修を打ち切られて担当しました。なにしろ即戦力で入社して、とにかく粋の良い若いやつが入ってきて、更に英語がちょっと出来るみたいだからということで、、、、出来なかったんですけどね、、、、。(笑)

アメリカ向けのデザインをしないといけないということで、アメリカってそもそも行ったことがないのでどういう国なのかな?というイメージを最初に想像していましたが、そのタイミングで運良くアメリカに出張することになったんです。
初めてアメリカに行ったので、空からアメリカの大陸を見て感動し、行程の中でグランドキャニオンがあったりして、アメリカって広い国だなと思いました。
面白いなぁ、グランドキャニオンって本当にひび割れみたいだなとか、そういった風景を見ながら、特にこのアウトソールなどはインスピレーションを得てデザインをしました。

機能的なことは正直よく分かっていなかったので色々先輩に聞きながら開発しました。
バスケットボールというのはやっぱり色んな動きがあるので、そういったところをレクチャーしてもらいながらデザインを纏めていきました。
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---やっぱりその特徴的なところに関しては、このアウトソールですよね。

そうですね。アメリカ全土をイメージしてデザインしています。

---「GEL-EXTREME」や「GEL-KAYANO」のデザインをしていると思いますが、靴をデザインする際に、榧野さんが特に心掛けている事を教えてください。

シンプルです。カッコよくなければ買ってもらえませんし、まずはカッコよさです。
そのカッコよさに機能性が滲み出ているところがデザイナーだった時のモットーです。
勿論カッコだけを優先すると良くないです。それはアシックスらしくないので、やっぱり機能を第一優先にして、デザインで包み込むような形、ただ取って付けたようなデザインではカッコ悪いですし美しくないので、機能とデザインの両面をミックスした形でデザインをするという所を心掛けていました。


---そんな新入社員の時に担当した「GEL-EXTREME」ですが、榧野さんにとってどういう存在ですか?

正直、めちゃくちゃかっこいいなって!(笑)
その頃は、見えてなかったんですよ。がむしゃらでしたから。
世の中の流れ、スポーツのトレンドとかスポーツ業界であるとか、特にアメリカを意識したスポーツ業界のトレンドといったところを、調べて理解しながら、アメリカらしさっていうのを表現したいなっていうのは念頭に置いていました。色々勉強しながら楽しませてもらったモデルですね。


---「EX89」のコンセプトをお聞かせください。
※榧野さんに代わり、アシックスのマーケティング担当者様より説明して頂きました。

弊社のコートタイプのスニーカーは白ベースにベーシックな黒ライン、ホワイトラインが入っているものが多いため、カラーリングが特徴的な「GEL-EXTREME」を現代のニーズに合うように復刻させることでコートタイプシューズのバリエーションを増やすというのがコンセプトになっております。

榧野さん
80年代後半の煌びやかな時代ですよね。アメリカンスポーツと呼ばれている。特にバスケットボールシューズですね。やっぱりそういう雰囲気のものが欲しかったと聞いていました。


---「EX89」の注目のポイントをお聞かせください。

いっぱいあります!
まず、見た目が重要とお話しましたが、この横側面、ソールの色分けがあるじゃないですか、この色分けが普通なら縦だったり少しだけ見えていたりするのですが、これは結構長いのです。しかも斜めで入っている。これがアシックスのストライプに繋がっていくっていうのを連想させるような見た目が面白い。ユニークですよね!
実は機能とは関係ないんですけどね。(笑)
それがまず1点ですね。


あとはバスケットボールのプレーの事を考えて、かかとに溝を入れています。
この溝はいわゆる緩衝性、いわゆるクッション性を高めるための溝になっています。これは機能的なポイントです。

ソールはキャッチーなイメージでデザインをしているようにも思われているのですが、実は屈曲性が良くなるように溝が入っています。ソールは機能的な所を考えて作られています。

80年代、90年代のデザイナーはパーツがそれぞれ積み重なっているデザイン、僕はスタックデザインって勝手に呼んでいるのですが、結構複雑になっているのですが、これ一つ一つが意味のあるデザインになっていてきっちり補強されています。


---「EX89」の隠れたヒストリーはありますか?

これもありますよ!
当時、豚鼻ハトメと呼んでいたこの前足部にあるプラスチックパーツです。 これ実はレースロックなのです。シューズを履いた時に特にこのつま先よりの一番前の部分が緩いと脱げてしまうのでしっかりと足とシューズをロックするための工夫として、このプラスチックのハトメを付けました。

これ、シューレースの通し方は普通の通し方と違うのです。
これが正規の通し方です。※写真を参考にしてください。
1か所だけ通すのではなくて、2か所通すことでしっかりとつま先の部分がロックされるようになります。
これがアッパーの部分では最大の機能的なポイントとなります。
このシューレースの通し方は「GEL-EXTREME」も「EX89」も共通です。是非、試してみてください!
<後編に続く>

以上、前編は「GEL-EXTREME」や「EX89」について。
後編は榧野さんの代表的なシューズ、「GEL-KAYANO」などについてインタビューをしています。近日中に公開予定となります。お楽しみに!

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